TOTO水環境基金プロジェクト(インドネシア)

インドネシアの沿岸地域には、全人口の60%にあたる約1億5,000万人が居住し、80%以上の工業が集中しています。多くの人口を抱え、国の経済を支えるこの重要な沿岸地域は、近年消失の危機にさらされており、特に中部ジャワ州ドゥマック県沿岸に居住する人々は海岸浸食の最大の被害者であるとされています。例えば、同県西部に位置するブドノ村の海岸浸食が悪化したのは、地球温暖化による海面上昇、養魚池造成に伴うマンブローブ林の伐採、過度の地下水汲み上げによる地盤沈下のほか、港湾施設の拡大に伴う潮流の変化などが複合的に重なったためと推測されています。

国内最悪と言われる海岸浸食は、ブドノ村の3小学校にも大きな被害を与えており、特にブドノ第2小学校とブドノ第3小学校の2校では、一時期、海岸浸食により校庭はおろか教室内にまで毎日のように海水が浸水する事態に陥っていました。幸い、政府より支援が入り、校庭の埋め立て、並びに校舎の嵩上げ工事が実施されたことから、浸水の恐れは小さくなっていますが、政府が投入できる資金には限りがあることから、両校とも児童用トイレの補修・建設にまで手が回っていません。両校のトイレは、老朽化が激しい上、浸食作用と海面上昇に伴い数年前より海水が流れ込むようになったことから、使用が厳しい状況にあります。子どもたちは学校近くの村役場や民家のトイレを借りて用を足しており、さらに両校とも手洗い場が設置されていないため、衛生面でも問題を抱えています。

このためオイスカでは、子どもたちの衛生及び教育環境を改善することを目指して、本年度TOTO水環境基金の助成を受け、上記2校において、トイレ補修・増設(校舎裏スペースの埋め立てて実施)、手洗い場の設置を行うと共に、児童および教員を対象に水環境保全に向けた実践的な環境教育を推進することとなりました。

着工に先立ち、学校教員、学校運営委員会役員、保護者代表、そして現地オイスカ関係者が集会を開き、工事の無事をお祈りした
着工に先立ち、学校教員、学校運営委員会役員、保護者代表、そして現地オイスカ関係者が集会を開き、工事の無事をお祈りした

6~7月にかけては、海岸浸食と海面上昇に伴い毎日のように海水が流れ込み、使用できなかったブドノ第2小学校のトイレ等の水環境施設を整備。古いトイレを解体し、浸水を防ぐために土台をかさ上げした上で、5部屋から成るトイレを建設したほか、新たに校内の4箇所に手洗い場を設置しました。整備工事期間中は、同校の教員や児童の保護者たちが毎日交代で労働奉仕に参加してくれました。

完成したトイレ
完成したトイレ

参加した保護者からも、「これまで子どもたちは学校でトイレに行くことができなかったので、とても嬉しい。(現在、新型コロナウイルスの流行に伴い休校中のため)早く子どもたちがこのトイレを利用できるようになって欲しい」という喜びの声があがりました。また同校教師も「手洗い場を新設したことで、新型コロナウイルスの感染防止にも役立つと思われる」といった感想をあげるなど、設備充実による衛生環境の改善に期待を寄せています。